夜が明けるを読んで 著者:西加奈子 適応障害の自分が思う夜が明ける

テーマは貧困、そして理不尽です。昔の話ではなく、今まさに起こっていることです。

ぜひ、普通の家庭の人に読んでほしい。イメージを持ってほしい。すぐ隣にある地獄の現実のイメージを。

誰の隣にもある地獄を他人事と思わないでほしい。

目次

今日本にある現実 高校生に決断させなければならないのか

貧困家庭の象徴 深沢暁(アキ)

普通の家庭から父親の死により奨学金を背負い進学することになった主人公(俺)

同級生の貧困女子 遠峰

突然の父親の死で働くか奨学金で大学進学かの決断を迫られることになった俺

父が死ななければする必要のない決断だった。

貧乏はすぐ隣にある。

金も学力もないから元々大学に行く選択肢がないアキ

学力はあるが父が満足に働けない、弟がいる貧困女子遠峰。

実質の借金である奨学金という選択を受け入れることは無く、就職するしか道が無い。金もない。

職場の理不尽

ドキュメンタリーの製作がしたいとテレビの製作会社に就職した俺。

ADとしてバラエティー番組の製作を担当。

局の年下のディレクターからの嫌がらせ、タレントからの止まない要求で寝る時間がない。

仕事も深夜に及ぶが残業代という概念がない。

立場の違い故、断るという選択肢がない。

やがて精神を病んでいく

劇団に所属したアキ。給料は安いが必要とされていることで劇団員を家族と思うことができた。

家族の為ならなんでもできた。周りの劇団員がアキを恐れるくらいにアキは家族に献身していた。

しかし、女性団長の怖いという理由で追い出されることになる。

理不尽はすぐ隣にある

生きるには金がかかる

肉体的、精神的に限界を迎えた俺

入院し、休職。やがて辞めるようにと連絡が入る。

自分の代わりはいくらでもいる。そう言われていたことを思い出す。

体は動かない。昔の自分はもういない。家賃を払えないし、働ける状態にない。

ベランダのごみが臭う。隣の生活保護のダンを恨む。

生活保護のくせに酒を飲みやがる。クーラーをつかう。痰を切る音がうるせぇ。殺すぞ。

誰かを憎まずにいられない。

劇団を辞め、アパートも出たアキ。金が無い。新宿を徘徊するとものまねBar FAKEを見つけた。

そこで薄給で働く。アキ・マケライネンとして。

バーでは売春の取引場ともなっていた。若い娘を大人がむさぼる。生きるために金がいるから体を売る。

オーナーのウズが売上を鍵を掛けない金庫にしまっていた。あるとき娘に刺された。金を奪われた。

アキは刺されて横たわっているウズから金をもらったが、働く場所を失った。

誰でも助けてほしいと言っていい

我慢を続けて、限界を超え、動けなくなってしまった俺。

俺のもとに会社の後輩の森が訪ねてくる。

いつも真っ直ぐな森。俺は森を壊したかった。打ち砕きたかった。自分と同じように我慢させたかった。でもそうはならなかった。

職場の先輩が妊娠して退職。相手は不明。シングルマザーだ。

気の強かった彼女。いつも何かと戦っていた彼女。何と戦っていたのか。男中心の業界と、社会とか。負けないように。

そんな先輩は出産して変わった。

子どもの為に遠慮なく頼ることにした。あらゆる制度を利用することにした。そうしないと無理だとわかったから。

俺は少しづつ動き出す。頼りはじめる。

家賃を待ってもらった。奨学金の返済を遅らせる為にある人に連絡した。

弱者を切り捨てる、分断を煽るあいつを撮ることにした。

カメラはないからお願いして譲ってもらった。

助けを求める、声を出す。それは自分でやらなければならない。

夜が明けるとは、明けない夜はないという意味だけではない

適応障害で休職する直前は、夜が明けることが、朝が来るのが嫌だった。

ろくに眠れもしない。吐き気、頭痛、目眩に襲われることがわかっている。

行きたくもない職場に行き、当然のように深夜まで働かされる。

なんの意味があるんだろうと思うことも、大事なこと、あなたにしかできないことと鼓舞されて、自分の命を削りながら会社のため、客の為に働く。

無理を積み重ねた当時の私は、夜が明けることが怖かったのだ。

主人公の俺も怖かったと思う。

深夜のラーメン店でポロっと漏れた怖いの一言がそれを表す。

怒り、憎悪も力に変わる。やりたくはないけど、やるべきことが見えてくる。俺の場合は撮る対象を見つけたから。

夜が明ける。

誰にも理解されない、マイノリティの生きづらさを描いた作品は朝井リョウの「正欲」

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この記事を書いた人

HSP、多汗症に悩まされる。仕事をがんばるも適応障害となり休職。現在も復職した会社で就業中。復職は果たすが元通りの体調とはいかず、人間関係がストレスの種。親知らずの抜歯で入院とトラブルが絶えない30代。なにもかも面倒、髪を切るのも面倒でセルフカットに目覚める。
社会の理不尽、人間不信をこじらせる。ネットの情報もあてにならない為、自分の経験したことをこのブログで記していきます。誰かに届け。

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