辻村深月 琥珀の夏 レビュー

琥珀の夏。タイトルとイラストから青春小説?裏表紙のからミステリーの要素もあるのかと勝手に思っていましたが、

人間の内面に迫る作者らしい一冊でした。

盛り上がりは少ないですがジワリます。

目次

あらすじ

クラスで人気のないノリコ。人気者のユリから楽しいからとミライの学校の夏合宿に誘われる。

人気者から誘われたことが嬉しくて合宿に参加したノリコだが、合宿ではユリと違う班になり、

話すこともあまりできない。

ユリは毎年合宿に来ている為、合宿先でもたくさんの友達がいる。

夜一緒に寝ることはできたが、ユリが発した「やっと一日終わった」が妙にひっかかる。

翌朝、同じ班の子と寝るから今日からは別々に寝ようと言われ、何のために合宿に来たのだろうと、家が恋しくなる。

親元から離れてミライの学校で生活しているミカ。

かわいくて人気者のミカ。

そんなミカと友達になれたことがノリコは嬉しくて、また会いたくて小学4年生から6年生までの三年間

合宿に通うのだが、6年生の夏にはミカに会うことができなかった。

その年に何があったのか。ミカはどこへ行ったのか。

30年の時を経てミライの学校で白骨化した子どもの遺体が発見される。

弁護士となった法子はミライの学校と対峙する。

ミライの学校と関わることで法子の心身に何が起こるのか、

ミカはどこへ行ったのか、遺体は誰なのか。

誰も宗教を笑えない。あなたはあなたをとりまく環境から逃れることはできますか?

誰ひとり見捨てない 

ミライの学校の指針として誰ひとり見捨てないという教義がある。

合宿に参加した男の子が周りに迷惑をかける。

勝手な振る舞いを繰り返す男の子を女の先生が突き放した物言いをしたときに

けん先生(元教師)が女の先生を咎める。

ここでは誰ひとり見捨てない。

理想があるから。

狭い集団ではそれが可能かもしれない。周りの人たちの協力(強制)を得て

一緒に走ることができるかもしれない。

でも現実社会ではいつまでも一緒にいることはできない。伴走し続けることはできない。

本当に大事なことは伴走を続けることではなく、先を走り引っ張っていくことのはず。

ちなみに、誰ひとり見捨てないと同じような言葉で

誰一人取り残さない我が国のSDGsでも謳っている。

理想では生きていく力は培われない

親元を離れて子どもだけで暮らす。自主性を重んじる。

問題は問答で解決する。

自然と共に生きる。

理想に共感して親の意思で子どもはミライの学校へ入れられる。

大人は自らの意思で先生として入所する。

理想のコミュニティなのに理想通りにいかない現実。

問答もいつからか先生が喜ぶ回答を探すようになる。

楽しいと思っていたはずなのに布団に入ればやっと終わったとほっとする。

ここなら理想の教育ができそうだと入所した大人も、そうできないことに気づく。

限界だと思い理想の場所を去る。

去らない者が満足しているわけではない。

ただ、ここを出たところで生きていけないのだ。

ミライの学校の高等部を出たところで、高校として認可されていないから

学歴は中卒。

問答、自主性では金を稼げない。実際社会で生きていくことは難しい。

聖人などいない

大人は都合の悪い現実に蓋をする。

なかったことにしてしまうから、真実が見えなくなる。

子どもが死んだことも無かったことになった。

ロッカーの中はエロ本でいっぱい。

聖人ではない、性欲もある。

先生同士できてること。

子どもながらにわかってる。

あなたは自身の環境から抜けられるか

カルト的な集団は自分とは縁遠いとおもうなかれ。

本書の内容は一般社会でも常々起こっていること。

あなたがブラック企業に勤務しているならなぜそこに留まっているのか。

辞めて別の会社でやっていく自信がないからか?

意味を感じられない仕事を続けているあなたはなぜそれを辞められないのか。

仕事と割り切るようになったのはいつからか。声をあげることをしないのは

蓋をされることを知っているからではないのか。

組織からあぶれることが怖いのではないか。

人は皆弱く、勝手な生き物だ。

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この記事を書いた人

HSP、多汗症に悩まされる。仕事をがんばるも適応障害となり休職。現在も復職した会社で就業中。復職は果たすが元通りの体調とはいかず、人間関係がストレスの種。親知らずの抜歯で入院とトラブルが絶えない30代。なにもかも面倒、髪を切るのも面倒でセルフカットに目覚める。
社会の理不尽、人間不信をこじらせる。ネットの情報もあてにならない為、自分の経験したことをこのブログで記していきます。誰かに届け。

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