4つの物語を通じて使者の青年の葛藤と生者の葛藤を描く

小説は短編の様な構成。
4つのストーリーで生きている者の心の葛藤を描く。
使者の青年は最後の物語、使者の心得で4つのストーリーとの繋がりが描き出される。
唯一のバットエンド
嵐美沙と御園奈津のストーリは他の3つとは状況を異にする。
かつての親友に殺意を向け、実際に死んでしまった彼女。
他の誰かに御園の口から真実を語られたくないがために、一度きりの面会を使わせたかった嵐。
ほんとのことを離して報われたかった会う前の嵐と、会っている最中に、この告白はただの独りよがりで、
真実を御園に知らせない方が彼女の為にもなるのではという考えが思い浮かび、
結局告白できなかった心の変化と。
嵐のことを咎めるつもりはなかったけど、あるブランドについての御園の意見をさも自分の意見として
好意をもっていた使者に伝えた嵐に対して湧き上がる死んだ御園の怒りと。
辻村深月が描く女の怒り、嫉妬はリアリティがあって生々しく、男の自分には毎回恐怖を感じる。




使者の葛藤
ツナグについての描写は最後の物語、使者の心得まで描かれない。
最後の物語で、使者がまだ見習いであることがわかる。
そして、使者を通じて自分の死んだ両親と仕事の意味を見つめ直すことになる。
生者の為に使者を利用して果たしていいのだろうか。
この仕事を自分に引き継がせる理由はなんだ?
この仕事をなぜ自分に引き継がせるのか、それがこのありえない物語の中で
現実的で人間らしさを感じた。