「ある男」城戸の性的欲求と本心 一部ネタバレあり

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ある男。平野啓一郎氏の小説。映画化もされました。

著者の作品は人間の心情、迷い、欲、決断に関わる人間描写が丁寧です。

文学というに相応しい作品が多くあります。

本作のある男もそのうちの一冊。

あらすじ等は記載しません。簡単にまとめられる作品ではありません。

人物描写がチープになってしまうので、内容はぜひ本を手に取って読んでほしいです。

目次

城戸は欲望を達したのか 幸せとは何か

ここでは城戸の内面にある欲望についてだけ確認したいと思います。小説ベース、ネタバレあり。

セックスレスの妻、香

依頼人の里枝

調査で出会った涼香(失踪した谷口大祐の元恋人)

城戸は、最初は里枝に好意があるものと自身でも思っていたが、それは涼香へ対するものと理解する。

調査を通じて涼香とやりとりをすればするほど彼女への想いが膨らむ。

妻の香に浮気をしているのではと若干の嫌疑をかけられる、息子を通じてこの子を手放したくないと思う、

妻は自分ではなく、別の誰かと一緒になればもっと幸せになれるのではないかという思いが、ある男の人生を辿りながら頭に浮かぶ。

妻との別れを意識する、他人になる、他者の視点をもつと、妻は美人だなと思ったりもして。

幸せとは何かというのも本書の主題の一つだと思う。

欲求との葛藤と。今を手放せない

城戸は涼香を本心では抱きたいのだ。絶対に。

でもそれができない。今の家族を手放すことができないから。散りじりになることは受け入れられなかった。

これも彼の本心だ。

城戸の葛藤をしり目に妻の香は上司と浮気をする。

奇しくも家族団らんでスカイツリーを訪れた際、昼食をとったレストランでそのことを知ることになる。

息子が妻のスマホでゲームをしていたときに誤って広告に触れ、城戸がその画面をゲームに戻してやろうとした際に

彼女の上司からラインが入り、メッセージのポップが出たのだ。

城戸はそのことについて妻には何も言わなかった。

だが、確信したはずだ。

それでも目を瞑ることにしたのだ。

こいつらとは違うという矜持

谷口大祐と名古屋で面会する。

涼香と一緒の新幹線で、涼香は働いていたバーの客に好意を持ったと城戸に打ち明ける。

その客はなんとなく城戸のことだとは城戸自身も感じていたが、

積極的に涼香にアプローチしていいものか判断ができない。

考えすぎてしまう。家族のこと、涼香との今の関係が崩れること。

涼香は仕事で知り合った存在であり、手を出してはいけないのだと。

調査は終りに近づいていて、今日を逃すともう会えないかもしれない。

それでも城戸は目的地の名古屋で席を立つ際に、涼香の手をとることまでで精一杯だったのだ。

結局城戸はだれとも交われなかったのだ。きっとあった、あいつとは違うというプライド

涼香は谷口大祐の元恋人だ。

大祐を探すため大祐の兄の恭一と共同でsnsのアカウントを立ち上げる。

名義は谷口大祐。訝しんだ大祐がこのアカウントに連絡をしてくることを願って。

涼香は恭一のことも学生のころから知っている。なんせ恋人の兄だから。

恭一は学生時代にさえない弟が美人の涼香とつきあっていることが我慢できなかった。

セックスしているなんて許せなかったのだ。

どうしても涼香を抱きたかったから、大祐を探しつつ、涼香にせまった。ヤらないと気が済まなかった

なぜ自分じゃないのかと。

涼香にはそれがわかっている。今の40を超えた自分を抱いても過去が変わるわけではないということが。

そんな恭一を軽蔑していた。

その話を新幹線で城戸にしたことが、彼が思いとどまった一因ではあるはずだ。

自分はこいつとは違うのだ。別人なのだと。そして、同じ人種だと涼香に思われることを恐れたのだ。

城戸は名古屋で谷口大祐と面会。

涼香のことにも話が及ぶ。

いい女だった。エロいこともたくさんした。

ニチャと下品な笑みを浮かべて話す大祐に対して恭一と同じ嫌悪感を感じた。

名古屋で大祐と会った以降の涼香との描写はない。

きっともう会わなかったのではないだろうか。

城戸は別人になることを少しのぞみつつも、そうはなれなかったのだ。捨てきれなかったのだ。

ぜひ本書を読んでみてほしい。

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この記事を書いた人

HSP、多汗症に悩まされる。仕事をがんばるも適応障害となり休職。現在も復職した会社で就業中。復職は果たすが元通りの体調とはいかず、人間関係がストレスの種。親知らずの抜歯で入院とトラブルが絶えない30代。なにもかも面倒、髪を切るのも面倒でセルフカットに目覚める。
社会の理不尽、人間不信をこじらせる。ネットの情報もあてにならない為、自分の経験したことをこのブログで記していきます。誰かに届け。

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